「いわてUmiのいえ」や和みのヨーガを通して、子育て中のお母さんたちに「大丈夫。一人じゃないよ」と伝え続ける七木田るりこさん。「今の自分があるのは『はぐみ岩手』がきっかけ」と語る彼女の、熱い想いを聞いた。
お母さんたちがホッとできるように
取材当日、「今日も子どもにブチ切れちゃって」と困ったように笑いながら話すのは、ただいま絶賛子育て中の七木田るりこさんだ。彼女は自分と同じように頑張るお母さんたちと寄り添い、講座やイベントなどを行う「いわてUmiのいえ」の代表を務めている。
るりこさん曰く、子育てはアクシデントの連続。「こんなに怒りたくないのに」と思いつつも叱らなければならない毎日に、お母さんは心も体もクタクタになってしまう。気分転換に出かけてみるかと腰を上げても、子連れで行ける場所は予想以上に少ない。周囲に迷惑をかけないようにと我慢して、その結果、強い孤独感を抱いてしまう人も多いという。
「でもね、みんなお互い様なんですよ」と、るりこさんは言う。
「子育てなんて迷惑をかけなきゃできないし、人に迷惑をかけずに育った人なんて一人もいない。だからせめて、お母さん同士で集まる時くらいは何も気にしなくていいですよって伝えているんです」
自分の原点は「はぐみ岩手」
そんなるりこさんは、和みのヨーガのインストラクターとしても活動をしている。「頑張らない、張り切らない、比べない」を大切にするヨーガで、彼女のクラスは子連れの参加もOKだ。途中で子どもが騒いでしまっても問題なし。子どものお世話をするのも授乳するのも、それぞれのタイミングに任せている。
「ときどき、私の方が心配になるくらい賑やかになってしまうこともありますが、帰る時に皆さんが『すごく気持ちよかったです』と言ってくださるので、あぁ良かったって安心しています」
周りの目を気にしながら愛しのモンスターの相手をするお母さんにとって、気兼ねなくいられる環境は貴重だ。彼女のクラスにリピーターが多いことも頷ける。
そんなるりこさんが「はぐみ」と出会ったのは、今から2年ほど前のことだ。前身の「はぐみ岩手」がスタートして間もなく、ハグミビトとして登場。当時は「いわてUmiのいえ」の発足前だったこともあり、「いつか岩手で『Umiのいえ』をやりたい」と語っていた。
そしたらなんと、半年も経たないうちにその夢が叶ってしまったのだという。
もともと横浜で始まった「Umiのいえ」の存在を教えてくれたのは、一人の友人だった。以前、関東に住んでいたるりこさんが妊娠したことを告げると、「それならココに行ってみるといいよ」と紹介されたのだ。
「Umiのいえ」では正しい赤ちゃんの抱っこの仕方やおくるみの巻き方、抱っこひもの使い方など、すぐに役立つ知識を丁寧に教えてもらった。るりこさんは出産後、女性ホルモンの急激な減少で雑誌やテレビを見ても上手く理解できない状態になったため、教わったことに本当に助けられたという。
そんなお母さんたちを支えられる場所を、岩手にも作りたい。
るりこさんの想いはやがて横浜の「Umiのいえ」代表に伝わり、快諾。「いわてUmiのいえ」が産声を上げた。
「あの時、ハグミビトで言ったから叶ったという思いがあるので、私にとって『はぐみ』は原点のような存在なんです」
これから叶えたい大切な夢
その後、るりこさんは外部ライターとして「はぐみ岩手」で連載をスタート。現在は「いわてUmiのいえ」のメンバーとともに、リレー形式で連載を続けている。
「以前、私の記事を読んだ人から、『子育てで大変だった時に読んで思わず泣きました』と言われたことがあります。自分の経験や書いた言葉が、どこかで誰かにちゃんと届いているんだなと、その時に実感しました」
彼女はこれからも頑張るお母さんたちに「大丈夫。一人じゃないよ」と伝えていきたいと語る。
取材の最後にこれからやってみたいことを尋ねると、目を輝かせてこう言った。
「『いわてUmiのいえ』専用の場所を作りたいです。少しくらい子どもが騒いでも大丈夫な場所」
なるほど。具体的には?
「駐車場があってバス停が近くて1軒家。できれば古民家で、子どもたちと一緒に障子の貼り替えとか畳を叩いたりしたいです。あと雑巾がけも。雑巾がけってしゃがむから、下半身が鍛えられて体の軸がしっかりするんですよ。だから転びにくくなって…」
超、具体的。そして止まらない。
しかし具体的に思い描いているからこそ、この夢もまたすぐに実現するのかもしれない。
「『はぐみ』は言ったことが叶う本だから、これから楽しみです」
そう言ってるりこさんは、まるでいたずらっ子のように笑った。
<七木田るりこ>
いわてUmiのいえの女将。和みのヨーガインストラクター。和みのセラピスト。満を持して、40歳の時に“お母さん”になった。
撮影/高橋直美
取材・文/山口由
0コメント