つくるひと#1 よしだりえさん

助産師として働きながら、学校などで性教育を教えるよしださん。自分の想いを文字にすることで、性教育を通して一番伝えたかったことが明確になったという。そんな彼女の、大切な想いを聞いた。


三度の出産を経て叶えた夢

よしださんが助産師になろうと思ったのは、大学時代に出会った一人の先生がきっかけだった。助産師として性教育の大切さを伝える姿に憧れ、自らもその道に進むことを決意。しかし在学中に睡眠障害であると分かり、治療との兼ね合いから助産師の資格を取得することはできなかった。


 それでも夢を諦めきれないよしださんは、大学卒業後に自身の妊娠がわかると「三人産もう。それから助産師の資格を取ろう」と閃いたという。「まだ一人も産んでないのにね」と言って笑う彼女に、なかばツッコミのように「どうして三人?」と尋ねた。すると「嬉しいことも大変なことも自分が経験しなければ、ママさんたちに何も言えないから」と、なんとも男前な答えが返ってきた。

 そしてその言葉通り、よしださんは三度の出産を経て念願だった助産師の資格を取得する。アッパレとしか言いようのないカッコよさである。


 現在は盛岡市内のクリニックに勤務する傍ら、「生と性の健康教育」を実践するハッピーバース研究会に所属。仕事の合間を縫って、各地で性教育に関する講演会などを行っている。休む暇もないほど忙しい毎日だが、「自分にとって性教育は、とにかく楽しいライフワーク」と言って、満足げに笑う。

書くことで本当の想いに気づく

 そんなよしださんは、「はぐみ」の前身である「はぐみ岩手」からの読者だ。いつも「楽しそうな人たちが作っている本だなぁ」と思いながら読んでいたが、ある時、友人の一人から「性教育に対する思いを文字にして残した方がいい」という言葉をもらった。それと前後して、「はぐみ」が新しいスタートを切るため「つくるひと」の募集を開始。こうしたタイミングの重なりに背中を押され、よしださんは新生「はぐみ」に自らの想いを綴ることを決めた。


 とはいえ、もともと書くよりも話す方が得意な彼女。想いを文字に変換する作業は、思った以上に難しいものだった。何度も書き直しては、じっくりと自分の心と向き合う。そうした時間を重ねることで、性教育を通して本当に伝えたかったことに改めて気がついたという。


 自分の根底にある想いを伝えるページ。だからこそ彼女の連載タイトルは「笑顔の樹の根っこ」なのだ。

自分らしい幸せを選ぶ生き方

 よしださんが性教育を通して一番伝えたいことは、「あなたはありのまま、そのまま幸せになっていいんだよ」ということ。大人は子どもの幸せを願うあまり、つい型にはめたくなってしまう。しかし、他人の目を意識して作り上げた人生は、本当に心から幸せな生き方だと言えるのだろうか。


 自分らしい人生を選ぶことができれば、人生はきっと、もっと楽しい。


 よしださんは性教育の講演をするにあたり、「楽しく生きる大人の一人として話しをさせてもらっている。こんな愉快な大人がいるんだということを知ってもらえれば」と語る。


 確かに彼女は、愉快で魅力的だ。有名な某名作アニメで「女は度胸だ」というセリフがあるが、そんな豪快さを感じさせつつ、女性らしい繊細な面も持ち合わせている。(豪快さといっても、ハムをナイフで突き刺して食べるといった類のものではない)


 性教育は知識を教える場と思われがちだが、彼女は自身の経験も交えて伝えることを重視する。知識として正確な情報は伝えるが、正しい答えだけを教えるわけではない。失敗を恐れるのではなく“成功も失敗も全ては人生の経験値”としてとらえ、自分で考える過程を大切にする。


 「私も失敗ばかりだった」と語り、それでも「根拠のない自信で『大丈夫』って言えたら、明日も笑っていられるから」と、晴れ晴れとした笑顔を見せるよしださん。そんな彼女から元気をもらう人は多いだろう。


 「これからも、自分の心と体をもっと大切にしていいと伝えていきたい」そんな彼女が今後、どんな言葉を紡ぐのか。ワクワクした思いとともに次号を待ちたい。



<よしだりえ>

助産師。とにかく明るく性を語る講演家。小中高校や保護者向けの思春期教育講演、少人数サロンを実践中。夫と3人の子どもと暮らすステップファミリー。


取材協力/喫茶GEN・KI

撮影/高橋直美

取材・文/山口由