つくるひと#5 三田美穂さん

美穂さんは、ボタニーペインティングと筆文字をかけ合わせたアートを手掛ける作家さんです。「はぐみ」夏号で一気にパワフルな作風になった彼女の、作品に対する想いについてお聞きしました。


夏号の作品が裏表紙になった理由

 美穂さんと初めて出会ったのは、今年3月のことでした。編集部による「つくるひと」への説明会が複数の日程で行われ、そこで偶然、一緒になりました。あれから「はぐみ」では毎号パワフルな内容をお届けしてきましたが、美穂さんの作品もその一つです。

 「はぐみ」では、ボタニーペインティングと筆文字を組み合わせたアートを掲載している彼女。春号は小さめの作品を掲載していましたが、夏号になると突然、どどんと大きな作品を発表。その作品が持つエネルギーの凄さに、見た瞬間「すげぇの出てきた!」と思いました。そしてその感覚は編集長も同じだったようで「これ、裏表紙にしたいよね!」と、校正日にひとしきり盛り上がったのを覚えています。

 春号と夏号との違いはなんだったのか?今回の取材で一番お聞きしたかったのは、このことでした。

自分と向き合うことで生まれた“龍が昇る作品”

 本物の葉を貼り付けて着色するボタニーペインティングは、「こうじゃなきゃダメ」という制限がなく、ただ無心で作品と向き合うことができるのだそう。

 「夏号では、とにかく思いっきり作ってみようと思っていました。過去も今も、自分の全てと向き合いながら作った作品です」

半ば瞑想状態で作り上げたというその作品は、龍が昇っていく様子を表した力強いものになりました。印象的なブルーの色は、アクリル絵の具を何度も重ねることで表現したもの。蓮の葉を使っていることから、沼のような深い色をイメージして着色していったそうです。この作品を作ったことで美穂さんは、「自分の中で一つの枠がはずれたように感じました」と語りました。


想いを伝えるためのアート

 ボタニーペインティングは自然の葉を使っているため、時間とともに劣化することがあります。でも、それもまた作品の味になる。もしも葉の一部が取れてしまっても、そこに新しい色を乗せることで変わり続ける作品を楽しむことができます。そんなボタニーペインティングを、美穂さんは「生きたアート」と表現します。そんな彼女がアートを通して大切にしていることは、『想い』でした。

 「昔、大好きだった祖母が難病で亡くなった時、最後のお別れをするのが怖くて会いに行くことができませんでした。あの時『ありがとう』と伝えればよかったと、ずっと後悔しています。でもその後悔があるからこそ、今、想いを伝えることを大切にしているのだと思います」

 今後はボタニーペインティングを通して、自分の思いや魅力に気がついてもらえるようなワークショップをやりたいと語る美穂さん。彼女が持つ温かくもパワフルな想いは、これから先も進化を続けながら多くの人を魅了していくのだと感じました。


<三田美穂(月toすず)>

筆文字アート、お名前WITHポエム、ボタニーペインティングアートの作成販売やワークショップを開催。盛岡を中心に活動中。



取材協力/喫茶GEN・KI

取材・文・撮影/山口由

HUG me Editors Room

「はぐみ」編集部のホームページです